2017年5月27日(土)

川崎重工業
副センター長(理事) 越山 雄氏に聞く

SupplierGOLD賞 連続11回

P&W社の信頼の証

設備機械を止めない

 川崎重工業西神工場の玄関ホールには、P&Wユナイテッド・テクノロジーズ社の「UTC Supplier GOLD賞」が掲げられていた。世界のサプライヤーを対象に1年で最も優れた企業にP&Wが贈る賞で、川崎重工業はこれを連続10回受賞している。今年も4月、11回目の賞を受ける予定で、裏返せば普段の生産活動の中で、常に品質の高い製品を納める信頼の「証」でもある。受賞式にはP&Wから責任者が来社し、西神工場では現場の人たちが集まり記念写真撮影を行ない、「次の挑戦」を誓う。航空機部品の生産は、小さなミス一つが生命に繋がる。このため、現場はコンピュータと人の智恵で「確認の確認」を取る生産を続ける。同社ガスタービン・機械カンパニー、ガスタービンビジネスセンター越山 雄副センター長に、航空機部品づくりについてお聞きした。(2月22日、西神工場で)

越山 雄副センター長
越山 雄副センター長
 1985年入社、管理部、資材部、海外駐在(英国ロールスロイス社)、エンジン業務部、生産管理部、ものづくり推進とりまとめを経て、2011年製造部長、2012年民間エンジン業務部長、2015年4月理事およびガスタービンビジネスセンター副センター長。
―現況について。
 「ガスタービンビジネスセンターのビジネスユニットには、航空用と船用の防衛関係、産業用、航空民需の3つがある。西神工場は、その中の航空民需の最大の生産拠点。回転体部品、ディスク、シール、シャフト、それを納めるケース、中圧圧縮機モジュール(IPCモジュール)組立を一貫生産する。人員は約450人、つい3年前までは250人程であったが、急激に人が増えている。特に生産技術と品質保証部門は増員をしているおり、管理棟2階の事務所は、生産が拡大するたびに技術者が増えている」。

―生産状況は。
 「主要機種に絞って年間840台、2020年には1300台弱の部品生産を見込んでいる。ここ2、3年増やしているのはTrent1000とXWBのIPCモジュール。月産20~25台になり、3年前が同1~2台でしたから比べものにならない」。

―大変な量です。
 「増大する需要に対し3年前から生産体制を見直した。例えば、西神工場にあったブレード職場は、工作機械ごと協力会会社に移設し、生産技術者を付けて技術指導をしながら増産に対応している。協力会社は現在7社が核で、各社でもできる範囲で設備投資を行なってもらっている」。

―具体的に。
 「高品質の航空機エンジン部品を生産する仕組みを作っている。継続して改善を進め、大きく変えたことは荒加工を協力会社に、西神工場で仕上げと組立を分担する体制に切り換えた。われわれがこのまま設備投資を続け、簡単な機械加工をしていては成長しないし、発展途上国を含め直ぐに追いつかれる。そこで難しい加工とか特殊工程、アッセンブルに西神工場は特化する。その代り簡単な機械加工はどんどん他社に出す。他社の人たちにも実力を付けてもらい、われわれが完成品の一部を購入する。また、元々実力のある海外の加工メーカーからも部品ごと購入する。そうした方向に切り換えている。サプライチェーンを増やしている段階です」。

―品質に不安はありませんか。
 「これはあります。元々品質が一番大事で、サプライヤーを選ぶ時も徹底的に私たちのオーディットチーム(監査・審査)が入り、能力を確認する。能力とは品質とキャパシティ、マネージメントの確認。実力があっても生産管理ができない会社が多く、人づくりをしている。決まったら、今度はモノづくりについても工程ごとに確認をする。一番初めにモノが出てきたらそれを検査し、OKを出し量産に入る。そして、再度オーディットチームを派遣し、ちゃんとモノが作れているかどうかを確認する。こうしたサイクルを回している」。

―ちょっとした傷も許さない50年の歴史は、信頼の証。
 「傷は、どこで起こったかを特定し難い。例えば、最終検査で傷を見つけたとします。傷の入る可能性のあるところをすべて潰す。最初から最後までの工程で、その可能性を全員で潰す。危ない、ないしは可能性があるところは見つかるまで探す。また、そうした時には、君が社長だと思ってやりなさいと、各工場の課長、現場責任者のトップである主任技士という責任者に言っている。非常に効果が出ている」。

―それはトレサビリティの問題ですね。
 「明石工場、西神工場の両工場では今、QP(クオリティー・プロダクト)活動をやっている。各工場に建屋ごとの責任者を置き、そこで出たどんな傷でも「君の責任」。そうしたら彼は品証だろうが検査だろうが、生産技術者だろうが関係者を集め、とにかく要因を潰す。その活動をしている」。

―品質を継続維持するには。
 「例えば、池内部長が所轄する生産総括部は、改善発表会をやっている。協力会社も一緒になって具体的な改善例の発表を続け、交流を深めている。社内でも、年に1回、絶えず摺り合わせの勉強会を行っている。私がモノづくり推進課長をしていた時、協力会社とも密な交流を図りながら品質、モノづくりの責任を維持する意識づくりをしてきた。私たちの製品が不具合を起こすと人の命に係わる、それだけ大事という共通意識づくりをしてきた。これは今も継続している」。

―仕事量が多いのは、RRやP&Wの評価の高さ。
 「自分で言うのもおこがましいのですが、そうだと思います。常に事故につながらない製品作りに取り組んでいます。安全性をどう高めて行くか、例えば、ディスク1枚にしても1種類作ったらいいわけでなく、開発途中でモディフィケーション(部分的な変更や修正)が起きる。それも連続で。だからIPCモジュールでも1号機と2号機、3号機で中身が少しずつ違う。初期はそうしたことが起きる。その度に加工を変える。形状を少し変える。最良の製品づくりに取り組んでいます」。

―西神工場生産が止まると航空機が止まる。
 「その意味では責任重大です。ですからRR、P&Wとは、お互いのパートナーシップ、信頼関係ができている。当社工場内には両社の日本事務所があり、毎日、設備や部品承認を連続して行なっています」。

 (「航空機エンジンづくりは実に面白い」と越山副センター長は、重圧の掛かる仕事を楽しんでいるようだった。約3時間の取材中もその姿勢が伝わってくる。生産現場が大好きで、工作機械に青ランプが点いていればご機嫌で、赤ランプだと雷を落とす。紙面の都合で、お話をいただいた全てをご紹介できませんでしたが、高品質と信頼性の高さには脱帽しました。それは、何よりもRR社のIPCモジュール組立を担当していること、P&W社の「Supplier GOLD賞」が証明していました)。

日本産機新聞 平成28年(2016年)3月25日号

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