2022年12月2日(金)

【Innovation !】ダイヤモンド・CBN工具

ダイヤモンド・CBN工具は高硬度、高熱伝導率の特性を活かし、高精度、高能率加工が要求される自動車や半導体などの産業において必要不可欠な存在となってきた。WSTS(世界半導体市場統計)によると、2022年の日本半導体市場は5兆円を超えることが予測されており、半導体の需要拡大に伴いウエハー製造、半導体製造装置用部品など加工で使用されるダイヤモンド・CBN工具の需要も増えると言われる。今回はメーカー各社の一押しの工具を紹介する。

耐久性高め生産性向上

PART1:旭ダイヤモンド工業「高い耐久性と優れた加工品位」
PART2:京セラ「長寿命・安定加工を実現」
PART3:サンドビック「加工効率・稼働率の改善へ」
PART4:住友電気工業「アルミ合金加工用新刃型」
PART5:タンガロイ「耐欠損性高め長寿命」
PART6:日新ダイヤモンド「ヘール加工を高能率化」
PART7:三菱マテリアル「幅広い切削領域で安定加工」
PART8:記者の目

PART1

旭ダイヤモンド工業「高い耐久性と優れた加工品位」

メリウスメタル

メリウスメタルは高い耐摩耗性を持ちながら、切れ味や形状維持にも優れたメタルボンドのダイシングブレードだ。半導体などのパッケージされた電子部品を切断するのが主な用途。

レジンボンドは切れ味が良く、加工面品位に優れるが、メタルボンドと比べて耐摩耗性が低い。一方、メタルボンドは耐摩耗性が高く、製品寿命が長いが、レジンボンドと比べて加工面品位に劣るとされている。

同製品は従来と異なる製法で開発し、レジンボンドとメタルボンド双方の特長を両立させた。高い耐摩耗性、優れた加工面品位を兼ね備え、品質と耐久性を求めるユーザーのニーズに応える。

ブレード先細り抑制に優れており、従来製品と比べ、切断時の形状崩れが少ない。これにより、形状を保ったまま長期間使用することができる。またチッピング抑制、切れ味の鋭さも改善した。

汎用性が高く、多様な被削材の切断にも対応する。樹脂、ガラス、セラミックなど様々な材料に対して、高精度な切断加工が可能だ。

PART2

京セラ「長寿命・安定加工を実現」

高硬度材加工用コーティングCBN「KBN020」

今年10月に発売したCBNの新材種。高強度CBN母材と独自の新コーティングで幅広い加工領域において、長寿命・安定加工の実現を図った。

「KBN020」は、新開発の高強度CBN母材に、新コーティング「MEGACOAT TOUGH for CBN」を成膜し、耐摩耗性と耐欠損性の両立によって、連続~断続・強断続まで幅広い加工領域に対応し、長寿命・安定加工を実現している。さらに、高い汎用性を持ち、CBNチップの工具集約による生産性向上にも寄与する。

新母材は高含有CBNを専用のTiNバインダで緻密に焼結したことで高い強度があり、耐欠損性を向上。高い放熱性も備え、コーティング性能を引き出す。

新コーティング「MEGACOAT TOUGH for CBN」はTiAlNを主成分とする高耐摩耗層と、コーティングの密着力を高める高密着層で構成し、膜剥離を抑制する。

同製品は自動車用シャフトやギヤなど多様な産業の製品加工に対応する汎用CBNとしてユーザーの生産性向上に貢献。

PART3

サンドビック「加工効率・稼働率の改善へ」

ブレーカ付きcBNチップ‐HGRブレーカ

焼き入れ鋼の加工において加工効率や機械稼働率の改善が大きな課題となっており、焼き入れ鋼の加工に最適なチップとして開発したのが「ブレーカ付きcBNチップ-HGRブレーカ」だ。

同製品は浸炭焼き入れ後の浸炭層除去加工に最適なチップで、自動車の部品加工における浸炭焼き入れ部品などの加工時間の短縮を可能にする。

特長は最大2㎜(片肉)の切込みが可能で、従来焼き入れ層除去では複数パスの加工を要していた箇所も1パスで加工することができ、大幅な加工時間の短縮が可能になり、ユーザーの生産性を飛躍的に向上させる。

さらに、チップすくい面には刃先に平行な荒加工用研磨ブレーカを設けており、切りくず処理も良好な設計となっている。

これにより、切りくず詰まりが原因となる機械停止も低減できるため、より一層の稼働率の向上に貢献できる。

PART4

住友電気工業「アルミ合金加工用新刃型」

高面品位仕上げ用「ワイパーブレードWS型」

「ワイパーブレードWS型」は、アルミニウム合金加工用高能率カッタ「アルネックスANX型」の新刃型。CVD単結晶ダイヤモンド「CVD単結晶ダイヤモンド「SUMICRYSTAL V SCV10」を刃先に採用。それにより、高面品位の仕上げ加工を実現する。

独自の気相合成技術による単結晶ダイヤモンド「SUMICRYSTAL V SCV10」は耐摩耗性と耐欠損性に優れ、アルミニウム合金加工で長寿命・安定加工を実現する。さらに切れ刃をシャープにし、アルミニウム合金加工で課題となるバリの発生を長時間抑制、光沢仕上げも実現する。

自動車は近年、部品の軽量化により燃費性能を高めるため、アルミニウム合金など非鉄金属材料を使用する割合が増加。そのため切削加工における高能率化や、工具の長寿命化、加工面品位の向上などへのニーズが高まっている。

住友電気工業はこうしたニーズに応えるため、アルネックスANX型に高面品位仕上げ用としてワイパーブレードWS型を追加し今年7月に販売を開始した。

PART5

タンガロイ「耐欠損性高め長寿命」

焼入れ鋼強断続加工用コーテッドCBN「BR35F」

焼入れ鋼の強断続加工で安定した高い耐欠損性を発揮する新コーテッドCBN材種。焼入れ鋼を素材とする歯車やすり割り入りシャフ
トなどの部品の旋削加工では強断続となる部位がある。そうした強断続加工でのインサートの突発的な欠損を防ぎ、工具の長寿命化を図るために開発した。

均一に分散された微細なCBN粒子によりクラックの発生や伝播を抑制する新開発の専用CBN母材を採用。加えて、突発欠損や微小チッピングの発生を極力抑える新開発のPVDコーティングを施した。これにより、焼入れ鋼の強断続加工でも、極めて高い信頼性と安定した工具の長寿命化を実現した。特に切削速度で150 m/min以下の加工領域に適している。

インサートは多様な用途に対応するため、幅広く設定。ネガティブ、ポジティブのISO形状に加え、チップブレーカ付、両面仕様でも低抵抗を実現した「MiniForceTurn」用インサートの他、高いろう付け強度で信頼性の高い「Wavy-Joint」仕様など、全164アイテムをラインアップした。

PART6

日新ダイヤモンド「ヘール加工を高能率化」

スーパーヘール用バイト

真空チャンバーや真空バルブなどのシール面をヘール加工する際に、高速加工による加工時間の短縮、加工面品位の向上を可能にした。

スーパーヘール加工制御とスーパーヘール用バイトを組み合わせることで、コーナ部でも送り速度6000㎜/分の高速のまま、減速せずに加工ができ、表面粗さRa0.4μmを同時に実現。総加工時間が最大80%短縮できた事例もある。

コーナ部のうねりを最小化し、横スジを抑えることができるので、後工程の磨き時間短縮にも繋がる。また、スーパーヘール用バイトは、超硬、PCD、単結晶ダイヤモンドなど、複数の材質で製作可能。被削材や加工形状、要求面粗さに応じて、専用設計が可能。

スーパーヘール用バイトは、牧野フライス製作所が開発した次世代加工ソリューション「SMART TOOL」の一つであるスーパーヘール加工で使用する専用バイト。

「SMART TOOL」は、加工機の性能を最大限に生かし、様々な加工において品質向上やコスト削減に寄与するエンジニアリングツール・機能の総称。

PART7

三菱マテリアル「幅広い切削領域で安定加工」

高硬度鋼旋削加工用コーテッドCBN材種「BC8220」

高硬度鋼旋削加工用コーテッドCBN材種「BC8220」は、耐摩耗性に優れるTiAlN系コーティングをベースに微細かつ超多積層構造を採用。加工中にクレータ摩耗が進行しやすく衝撃でチッピング、欠損することがある高硬度鋼の旋削加工でも、コーティングへのクラック進展を抑制し、連続切削加工から強断続切削加工まで幅広い切削領域で安定加工を実現する。

また、CBN基材に「超微粒バインダー」と微粒cBNを分散することで、クラックの進展を抑制し、切削時の突発欠損を防止する。さらに、バインダーの耐熱性を高め、クレータ摩耗進行を軽減。バインダー成分の変質による耐摩耗性の低下を防ぎ、クレータ摩耗に起因するチッピングや欠損を抑えることができる。

さまざまな切込み条件に合わせたブレーカをラインアップする。中切込み加工用「BMブレーカ」、仕上げ加工用「BFブレーカ」、高切込み加工用「BRブレーカ」を揃える。特に「BRブレーカ」は多段のブレーカ壁により、幅広い切り込み領域に対応する。

PART8

記者の目

需要増が期待される電動車向けや半導体関連部品では、ワークの材質や加工に求められるニーズが大きく変化している。焼入れ鋼を始めとした高硬材の増加や、高い鏡面性が必要とされる超精密加工などが増えている。

こうした変化で注目を集めているのが、ダイヤモンド・CBN工具だ。高い鏡面性が得られるため、これまでも研削で行っていた仕上げ加工を切削のみでできることなどが評価されてきた。

近年ではこうした加工を集約できるメリットに加え、用途の幅が広がっていることも注目される要因の一つだ。高度な素材開発に加え、PVDコーティングの開発が進み、これまで弱みとされてきたチッピングを抑制し、安定した加工できるようになっているからだ。

これらの特長により、元々の硬さという利点に加え、加工が安定化したことで「より早く長く削りたい」というニーズに対応している。また、連続加工から断続、強断続まで幅広い切削をワンパスでできることなども評価されている理由だ。ある工具メーカーによると、工具交換の削減や長寿命化のメリットを生かし、CBNを採用するケースも少なくないという。

また、半導体や電子部品の精密切断でのダイヤモンドの採用も進むなど、ダイヤモンド・CBN工具の重要性は増している。

JIMTOFでも西ホールを中心に多くのダイヤモンド・CBN工具が出展される予定だ。その進化は抑えておきたい。

日本産機新聞 2022年10月20日

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