2024年4月19日(金)

本紙販売店アンケート調査
【人材の採用・育成】

広がる活躍の舞台

ベテランの経験活かす

 全日本機械工具商連合会が昨年行ったアンケートでは、人材育成を経営課題とする声が最も多かった。本紙では販売店の採用や育成を掘り下げるべく、100社超にアンケートを実施。新規採用や再雇用、外国人など多様な人材を確保する動きや、階層別教育や女性の職場環境改善を図るなど様々な取り組みが行われている。

 また、採用より育成に注力する傾向も見られた。商社やメーカーの協力を求める声も多く、業界挙げた人材の育成が求められている。アンケート調査は7月1日から15日まで全国の販売店450社に郵送でアンケートを送付。111社からの回答を得た。(本紙8月5日号1~3面から抜粋)

教育投資の規模

外国人、女性の採用増加

 採用時期については「定期的な新卒採用」と、「適時中途採用」、「適時新卒採用」がほぼ三分。

 募集方法は「ハローワーク」、「合同会社説明会」、「リクナビなどのネット」の順となった。採用コストは「必要な人材なら500万円以上」と言う意見もあったが、「ゼロ」や「20万円未満」とする声も少なくない。ハローワークを使う企業が多いところをみても、採用に投資しづらい状況にあることがわかる。

 新規採用の一方で、9割超の企業が実施しているのが「定年退職者の再雇用」だ。年金制度や政府の施策もあるが、年齢の上限は65歳が大半。目的を聞いたところ「経験やノウハウを活かせる」との声が最も多かったが「若手育成」を期待する意見も目立った。また、大手中心だが外国人の採用を増やしているのも、特徴的な動きだろう。

 人材戦略で採用と両輪をなすのが育成だ。多くの企業では階層別の教育を進めている。若手や中堅社員向けでは向けでは「OJT」が大半だが、知識習得とマナー教育など両方が得られるからか「メーカーの研修プログラム」も多い。管理職や幹部や後継者教育となると、「外部委託」が増え、「社長自らが教える」ケースも目立つ。教育への投資額は50万から500万円以上とバラつく。しかし、当然ながら採用投資と比較すると、育成への投資額が圧倒的に多く、育成に注力していることは間違いない。

 また女性活用の芽も出始めている。女性活躍の環境整備について聞いたところ8割以上が「整備している」か「検討」している。
このように多様な育成を進めているものの、課題について自由回答では「業界の認知度が低い」、「通常業務と研修時間のバランスがとりづらい」、「OJTに依存し過ぎ、体系的育成ノウハウがない」など、育成に悩む声も多い。

 商社やメーカーに人材育成で望むことを聞いたところ、「メーカーや商社は大手が多いので、その手法を販売店にも展開して欲しい」、「(メーカー、商社、販売店)双方向型の研修」など、販売店、商社、メーカー横断的な人材育成が求められている。

 QA. 求める人材  

活発、向上心、誠実

求める人材

 「明るく活発」「向上心があり前向き」「誠実・まじめ」など普遍的な回答が多くを占める。そのほか、意欲的や熱意がある、チャレンジ精神、プラス思考、積極的といった声も多い。「コミュニケーション力」には、自ら発信できる、連携できる、気遣いができるなど周囲との関係性を良好にする能力が含まれる。「常識がある人」は、行動も含め礼儀をわきまえ、社会人として基本となるマナーが求められる。

 その他には、「他社(特に顧客)から学び、的確にニーズを把握できる」や「多様性に理解があり、自身もその一つであると自覚している」「会社の理念に共感してくれる」「グローバルな視点を持っている」「洞察力がある」など、即戦力の人財を求める声もあった。

 QB. 新規採用の目的  

若返り、事業拡大

新規採用の目的

 「若返り」や「事業の拡大」を目的とする回答が多い。一方で将来を見据えて「偏りのない人員構成」や「企業文化の継承・事業の継続」も多く挙げられた。また「社員の切磋琢磨」や「新風を吹き込む」など新人の入社により会社の活性化も期待している。

 QC.定年退職後の再雇用  

44%がベテラン再雇用

定年退職後の再雇用 再雇用の上限年齢
 
 94%が再雇用しており、65歳までが一般的だ。70歳までが20%を占めており、現役年齢の延長が予想される。再雇用の目的としては、ベテランのノウハウや経験、知識を有効に活用し、商売の戦力として、また若手・後継者の指導にと幅広い活躍を期待している。また、客先からの要請によるものもあるようだ。年金制度を含む法対応、新規採用の難しさもある。「今まで一緒に頑張ってきた仲間とできるだけ長く仕事をしたい」という声もあった。

 QD.外国人の採用  

大手中心、全体の24%

外国人の採用

 外国人を採用しているのは大手中心で24%。まだまだ採用していない企業が多い。外国人採用の目的は「海外市場開拓」「海外事業拡大」「グローバル対応」「顧客の海外ビジネスサポート」など海外展開を見据えた回答が目立つ。また、「海外製品輸入のため」や「社員の視野を広げる」ことを目的とする企業もある。

 QE.育児休暇制度  

63%が「導入している」

育児休暇制度の導入状況

 63%が「導入している」と回答し、「導入していない」が31%となった。小規模企業では、休職後復帰した時に職場を確保するのは困難なようだ。

 QF.採用の課題  

応募減少、内定辞退増加

 「景気浮上に伴い応募者が減少」「内定辞退者の増加」「良い人材が見つかりづらい」「中途採用の若手・即戦力が集まらない」「若い女性が集まりにくい」など、高校や大学の教員が、規模の大きい会社に学生を入社させたがる傾向があることもあり、中小企業ならではの苦しい現状が窺われる。

 また、「試験や面接だけではその人の本質を見抜けない」ことにより、「長続きしない」「対応が難しい」といった悩みも多い。

 QG.人材に求めること  

マナー、人格、指導力

若手社員に求めること 中堅社員に求めること

 若手社員(入社5年以下)、中堅社員(主任・係長クラス)、管理職(課長・部長クラス)、経営幹部(役員クラス)、後継者それぞれに求めることを聞いた。

 若手社員では、社会人としての基本である「マナーの向上」が最も多い。次いで「商品知識」「人格向上」と続く。「話力」や「聞く力」も仕事をする上で求められる重要な能力だ。

 中堅社員になると、「商品知識」に加え、「人格向上」が上位となった。並んで「聞く力」「話力」、そして中心的な戦力として「人脈拡大」や「リーダーシップ」が求められるようになる。

 管理職になると「管理能力」「指導力」「リーダーシップ」が必要となり、部下を導くために「人格向上」も必須だ。

 経営幹部では、経営者と同様に「財務・経理知識」や「法的知識」が必要となり、「健康」も重要になる。後継者も「財務・経理知識」や「法的知識」が求められる。同時に「人格向上」「健康」も必須だ。将来の経営者として人脈もしっかり築くことが求められるようだ。

 QH.女性活躍の環境  

マナー、人格、指導力

女性活躍の環境整備 女性が活躍している職種

 女性が活躍できる環境の整備を進めている企業が40%。検討している企業を含めると90%に迫る。人財不足が懸念されるなか、機械工具業界でも女性の登用が増加している。現在、女性が活躍している職種は業務、経理、営業補佐など社内勤務が多いが、営業職も増加しつつある。優秀な人財に性別は関係ないということだろう。また、女性管理職がいる企業が37%に達した。既に6人の女性支店長が活躍している企業もある。

 QI.教育の方法  

OJTやメーカー研修

若手社員の教育方法 中堅社員の教育方法

 若手社員は「先輩社員によるOJT」と「メーカーによる研修」が中心だ。中堅社員では「上司によるOJT」「メーカーによる研修」に加え、「組合や外部機関の研修プログラム」の活用が増加する。

 管理職・経営幹部になると、上司・社長の指導に加えて「コンサルタント等に外部委託」し、目的に合った外部からの刺激を受けられる環境を作っている。後継者は、社長が直々に帝王学を指導するようだ。また、外部委託もあり、盛和塾やPHPなど後継者育成のための勉強会に参加している。一方、入社間もない場合は、上司や先輩、メーカー、卸商社など様々な教育を受けさせている。

 QJ.育成の課題  

指導プログラム確立が急務

 各社とも様々な教育方法を駆使しながら育成に取り組んでいる。しかし「とにかく人は難しい」という声があるように、課題も各社各様に多く抱えている。「通常業務と研修時間のバランスが難しい」や「働き盛りを目前に退社する」など教育に対して及び腰になってしまうケースや、「積極的に参加しない」「成果に個人差がある」「学んだことを試そうとしない」「業務以外に視野を広げない」など、社員自身の向上心に疑問があるケースもある。

 「管理職向けのカリキュラムが明確でない」「女性の育成方法が確立していない」などのほか、「一貫した教育プログラムが無い」というように、自社独自の研修・育成プログラムが確立できていない企業が多いのが実情だ。また、再雇用者などベテラン社員の活用方法も課題だ。「商品知識だけでなく、営業スキル・IT等、色々な方面から勉強できる場を組合等で企画してほしい」という声もあった。

 社員のレベルアップの重要性を認識しながらも、十分にできていないのが現状だ。熟練社員の活用も含めた効果的な人財育成体制の構築が急がれる。

日本産機新聞 平成27年(2015年)8月5日号

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