2018年12月16日(日)

【座談会】販売店4社が語る2018 テーマ「未来を拓く戦略」
第2部 -外的変化に対応するには-

社員たちを大切にする会社づくりを

  第1部では「各社の課題と取り組み」について話を聞いた。製造業の海外展開やネット通販による機械工具の商流が変化しているなかで、どのように他社との差別化を図るかが重要になっており、それには「人材育成」が大きな要素となり、各社の人を育てる仕組みや方法などを聞くことができた。第2部では、外的な変化をもとに、現状どのような差別化を図っているかを、各社の考えや取り組みについて話を進めていく。ネットでは販売できないモノをみつける、あるいはネットを活用するなど、それぞれの戦略を紐解く。

前々回【【座談会】販売店4社が語る2018 テーマ「未来を拓く戦略」第1部 -各社の課題と取り組み-

前回【【座談会】販売店4社が語る2018 テーマ「未来を拓く戦略」第1部 -各社の課題と取り組み2-

続いて、機械工具業界を取り巻く外的な変化について進めていきたいと思います。特にネット商社は年々拡大しておりますが、機械工具商社はどのようにネットなどと差別化あるいは向き合えば良いのでしょうか。

広島商事 林 正人社長
広島商事 林 正人社長
 林  ネット商社という会社は、うまく名前をつけたと思いますが、所詮は物しか売りません。物理的な物というのは、ネット商社に限らずネットでほとんど全て売れると思います。売れないものは無いのではないでしょうか。最近は生鮮食料品までネットで売るわけですから。我々も物を売るわけですが、自分が本当に何を売っているかを知っている人はほとんどいません。

それはどういうことでしょうか。

 林  例えば、口紅を買っている人は口紅を買っているわけではなく、夢を買っているんです。これを塗ると自分が若くきれいに見えて、彼氏が喜んでくれるのではないかと。ただ、あの赤や紫の棒の原価を80円として、新聞紙にくるんで100円で売ったとしても、そんな夢を買う人はいないでしょう。だから高くても立派なパッケージにして、美人の女優を使って売れば3000円でも売れます。だって夢を買っているんだから。同様に、ドリルを買っている人は、ドリルそのものを買っているわけではありません。その先には穴があり、このドリルなら、この公差で、バリを少なくして、これだけ穴をあける…というものを買っているんです。

顧客の問題解決ってことですね。

 林  営業マンが注文を受けて、このドリルが100本売れたといっても、それは意味がありません。ただドリルを運んでいるだけです。もし、そのドリルで30穴あくなら、30穴×100本で3000穴に必要精度の穴があくんだということがわかって売っているでしょうか。普通の営業マンはドリル100本という注文がきたら、運んで終わりです。以前から物を売るのではなく、ソリューションを売るべきだと会社で言いました。解決策を売るべきだろうと。そこまで考えて物を売っている人はほとんどいません。だから我々は物ではなく、ほかのモノを売らなければならない。ソフトというかソリューションというかは別にして、売っているものをちゃんと理解する。ネットで売れる物を売っても意味がないということです。ある意味、ネット販売は脅威ではないかもしれません。物しか売らないんだから。アフターサービスが無いし、特殊物や何かを製作することは難しいと思います。

ネットと差別化するために、どんなことをやっていますか。

朝日 幡野 裕幸社長
朝日 幡野 裕幸社長
 林  当社にはダイヤモンドロータリードレッサーという製品があり、プロファイル研削で非常に複雑な形状をしています。砥石を反転した形状になっていて砥石を削るのですが、ひとつずつ形状・精度が違います。ワークを見せてもらって、ゼロから設計して、ダイヤモンドを1個ずつ埋め込む大変な作業です。製品形状が少しでも変われば、全部つくり直します。そんな物は絶対にネット販売で売れません。マイクロメーターや超硬チップとか工具は結構、ネット販売できます。誰が卸すかだけだと思います。だから、競争しないという方向に向かわないと。ただ、ネットで売れる商品はかなり大きなマーケットですよね。そこをズボッと取られてしまったら、あまり残らないという気がします。町のカメラ屋はもう無いし、シャッター街からスーパーに移って、コンビニに移って、今度はネットへと消費財もどんどん変わりましたから。生産財にもそういうことが起きると思います。そうなると、物でないモノを売らないといけない。まずは何を売っているかをはっきりさせることで、物に何かをつけて売るとなると人が必要になります。しかもソリューションを知っている人が必要です。マーケットは小さくなると思いますが、間口は小さくなって、入り口は狭いけれど深さは深いというマーケットになるでしょう。そこにみんなが残れるかというと、そうではないかもしれません。どのように方向転換するかが重要だと思います。

技術的な知識も必要ですね。

 林  そうです。大手のお客様の技術者でも切削や研削のことを知らない人がどんどん出てきています。若い技術者はそんなものに興味が無いし、機械工学を勉強していても電気やAIなどに走ってしまっているでしょ。そういうところにマーケットがあるように思います。

幡野社長はネットに力を入れていますが、どうでしょう。

 幡野  3年くらい前にネット販売を立ち上げました。7年ほど前からお客様はEDIやEコマースを導入していて、初めは何をしたいか分かりませんでしたが、今や普通になってきました。現在もネットが脅威だという人がいますが、脅威を通り越しているので、そこに対策を打つというのは皆無だというのが私の結論です。

では、どのようにしているのですか。

こうら 小浦 正喜社長
こうら 小浦 正喜社長
 幡野  林社長は闘わないとおっしゃいましたが、当社は大手通販に乗っかりました。乗っかって供給側になればいいという発想です。片方で「あくが屋」というドメインをやりながら、片方で大手通販に乗っかったんです。理由は乗っからないと彼らがBtoBで何をしようとしているのか分からないからで、自分たちが供給側に回って、もし、メーカーや仕入先の協力を得られれば、流通にひとつの風穴を開けられると思います。向こうから声がかかり、商品を絞った形で進んでいます。今は「データを早く送ってください」と急かされている状況です。とにかく導入し、やってみて、そういうものが自社にとってプラスかマイナスかを自分で判断すればいいと思います。でも、工具屋さんは誰もやらないですね。「ネットが怖い」とか「ネットの台頭」うんぬんと言いながら、何もやっていないのが現状でしょう。敵がどういう大きさで何を仕掛けてくるのかを知らなければ勝ち目はありません。だから、社長の意識を変えることが必要です。言葉の意味も、敵が大きいか小さいかも分からないのに「ネットが攻めてきた、フェイス トゥ フェイスで」と言っている人がいます。フェイス トゥ フェイスも大事ですけど、少しニュアンスが違うと思います。

ネット販売の難しいところは。

 幡野  はっきり言うと、自社ドメインでやってみたら、ダメな所が結構多いです。当社はせいぜい数千アイテムで、片や何百万アイテムだから勝てるわけがありません。そこに機械工具卸商が乗っかってバックアップするような形で物流センターと連動し動いているので、1社がたとえ1万アイテムをそろえても勝ち目はないのです。でも、彼らが扱ってない商品だと当社サイトに注文が来ることもあります。それは運です。加工依頼もネットで受けています。お客様からあるメーカーの寸法図面がサイトに載っているが、同じように加工できないかと言われると、同時にメーカーにも情報が飛んで、2日間で図面を起こしてメーカーからPDFで返ってきます。それに見積書をつけて送ります。例えば、お客様から試作依頼があった場合は、3日間とか10日でほしいと言われます。それを我々が受けて、1~2週間でつくれればニーズがあると思って立ち上げました。やれることってそれくらいですね。型番のついた標準品は、大きい所に乗っかるか、自分たちのテリトリーではないと思ってあきらめた方が良いように思います。実際、機械工具商社がここ数年でネットショップを立ち上げて成功したという事例は本当に数少ないと思います。

ユーザーの購買方法も変わりました。

三和商事 和久田 修志社長
三和商事 和久田 修志社長
 幡野  お客様は今、2社購買から1社購買に移りつつあります。商品、特に流通商品の単価は客先もここ2~3年で大体つかんでいます。あとはそれをできるだけシンプルに購入して、便利な方法で現場に供給することを考えているので、いちいち見積もりなんか取りません。ある自動車メーカーなんかは2~3社購買と言っていますが、当社のお客様は一部の商品は1社購買になってしまいました。そうなるともう入れないですね。工場が3つあって、今まではこの工場は何とか牙城を守っていたけれど、資材・購買が「〇〇1社から買う」と言ったら終わりです。それから、ネット販売は物品の販売ととらえる人も多いですが、残念ながら、システムで動くものと物だけを売っているものの2つがあります。システムで入ってきたらもう手が出せません。本音のところ、乗っかる方法を自分で考えるか、潔く撤退することを考えた方が良いでしょう。それなら乗っかるしかない。

機械工具流通が機能している面は。

 幡野  特定ユーザー向けの価格を設定しているので、常に販売店や問屋が在庫をしています。ネットのデメリットは、物量で注文がくると対応できないところです。当社のお客様は、1個だとネット商社から買いますが、100個だとネット商社からの見積もりが2週間かかるというので当社に引き合いが来ます。とにかくお客様は利便性を求めている。だから、ネットとの付き合い方は、敵ということではなく、どうやってそのシステムに乗っかるかを考えるべきだと思います。販売店は能力やコストだと難しいですが、ネット販売会社から声がかかっているなら、1度乗ってみたらどうかと思いますよ。たまたま当社は「あくが屋」があったからかもしれませんが、大手通販会社から声がかかりました。

ネットで請け負う加工の件数は。

 幡野  そういうこともあるというくらいです。私は、走りながら考えるタイプなので、思い立ったらバナーを立ち上げるんです。もし注文を拾えたらニーズがあったと思えばいい。多分ネットショップをやっている人はみなそうだと思うのですが、全然あてにしていなかった物が売れるんです。いろいろなことをやっていて、たまたまポツンと上げた物が、ボコボコ注文が入って、アイテムを増やしたという話をよく聞きます。理由は「そういうのを載せているところがなかった」とか「品ぞろえが多い」とかですね。当社もあるメーカーの商品はサイトに注文が入ります。納期や領収書の確認のために買ってくれた人に直接電話し、どうして当社を選んでくれたか聞くと、「ほかでこの商品を買える所が無かったので助かりました」と言われました。そこでしか売れないものを探すには、まずそこに店を出して、何が売れるかを自分でみて、可能性があると思ったら資金を投入する感じです。拡大させるにも3年や4年はかかると思いますが。

 和久田  ネットの時流は避けられないと思っています。何より日本の流通の速さは素晴らしい。先日、タイの機械工具商社に「ネット業者の影響ってどう?」って聞くと「そんなの全く脅威じゃない。だって、品物が早く届かないもの」と言っていました。日本のように今日頼んだら明日くるなんてあり得ない。ベトナムの機械工具商社も、日本ならヤマト運輸や西濃運輸を使えば、ほぼ1日で届きますが、ベトナムでは2週間かかるらしいです。だから、流通のスピードがまだまだ日本ほど機能していないので、ネットは怖くなくて、昔ながらのフェイス トゥ フェイスが当たり前という感じです。アメリカは日本の10年先を進んでいて日本が真似してきた。タイやベトナムなどは日本を真似てどんどん変わっていくことになるでしょう。だから、我々はアメリカをみればいい。アメリカの流通スピードや方法をみた方が参考になります。次にアメリカが何をやっているのかを調べれば、今後何が起こるか分かるのではないでしょうか。

【座談会】販売店4社が語る2018 テーマ「未来を拓く戦略」第2部 -外的変化に対応するには2-に続く

日本産機新聞 平成30年(2018年)1月20日号

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