2017年12月11日(月)

「産業用ロボット」総力特集
=市場と販売の現場を調査=

自動化・無人化背景に高まる市場

生産見通し8000億に上方修正

 労働力・熟練技能者の減少などを背景に、生産設備の自動化のひとつとして産業用ロボットの市場が拡大している。自動車や電機大手にとどまらず、中小規模のユーザーにも投資意欲が波及。日本ロボット工業会は今年の生産見通しを当初より500億円上回る8000億円に上方修正した。ロボットの市場規模はどこまで拡大するのか。ユーザーが求めるもの、そして商社の販売戦略は。ロボット市場を取り巻く動きに迫る。

日本ロボット工業会システムエンジニアリング部会
部会長 小平紀生氏(三菱電機主席技監)

SIerとの連携深めビジネスチャンス創出

小平紀生氏

ー産業用ロボットの市場動向は。
 「出荷台数は2014年から過去最高を更新し続けており、市場は絶好調だ。特にアジアを中心に輸出が伸びており、輸出比率は75%を超えている。また、ここ20年ほど減少傾向にあった国内が少しずつ増えてきているのも良い傾向にある」。

ーかつて日本はロボット大国と呼ばれていた。
 「市場規模、技術力ともに世界一を誇っていた。しかし90年以降、日本の製造業が相次いで人件費の安い海外に生産拠点を移したことによって、ロボットを活用して国内で競争力の高い生産システムを構築する気運が低下してしまった。一方その間に、中国などの海外が大きく成長し、今や市場規模は逆転され、技術力も拮抗(きっこう)している」。
 「それがここ最近、為替の影響などによって、日本の製造業が国内に生産を戻す傾向にある。産業用ロボットを上手く活用して付加価値の高い生産をしようと考える企業が増え、国内での需要が高まっている。また、ロボットの導入は大企業だけでなく、中小企業でも進んでいる」。

ーその理由は。
 「ロボット技術の進化によって、用途が広がったことが大きい。以前は搬送など単純作業が中心であったが、現在は部品の組み付けなど複雑な作業への応用も拡大。今までは自動車分野での用途が中心だったが、最近では電気電子や食品などの分野で新しい自動化へのチャレンジが増えている。とはいえ、産業用ロボットは現在、全世界でも年間29万台しか出荷されていない。そのうち国内は3万台。まだまだ活用されている分野は限定的で、市場開拓の余地は大きい」。

ー産業用ロボット導入に必要なことは。
 「ロボット化は本来、人を減らすのではなく、生産性向上など競争力を強化することが目的のはず。まずは、これを念頭に置いて考えることが重要だ」。
 「また、自動化システムは導入してそのまま使い続けるのでは競争力は低下してしまう。いかに改良して競争力を維持するかが大切。だからこそ、『保守』『改良』『改造』を見越してどこまでシステムを構築できるかが求められる」。

ー最近では人と一緒に働ける協働ロボットが注目を集めている。
 「確かに防護柵が不要で導入しやすい協働ロボットは、産業用ロボットの活用の幅を広げるだろう。しかし、何でも使えるという訳ではない。下手に導入すれば、逆に生産性を下げてしまうこともある。やはり自分たちが何をしたいのか目標を決めて、それに合ったロボットを導入することが大切だ」。

ー今後、産業用ロボットはどういう進化を遂げていくか。
 「汎用的な機種ではなく、専用化が進んでいくと見ている。それぞれの用途に特化した機種が開発されるだろう。また、樹脂で軽量化し、より早い動作が可能な機種や、至るところにセンサを取り付けた機種など、様々な技術を組み合わせた機種が開発されるのではないか。いずれにせよ、ロボットメーカーとしては、今後も製品力を高めるための努力を続けなければならない」。

ー機械工具商がロボットを販売するためには。
 「ロボットを販売するには、システムを設計、構築できるシステムインテグレータ(SIer)の存在が欠かせない。機械工具商には、SIerと上手く連携を取ってビジネスチャンスを創り出していくことが必要ではないか。当工業会では、「ロボット活用NAVI」というサイト上でSIerのリストをつくり、現在200社を超す企業を掲載している。また、来年度にはSIerで組織した業界団体を立ち上げる予定。ぜひ、これらを有効に活用してほしい」。

現場を訪ねて

人の事故ゼロに
大阪製罐 ロボで部材供給

大阪製罐1

石橋常務
石橋常務
 プレス機で打ち抜いたり曲げたりした金属の板をつかみ次の工程のプレス機へ―。洋菓子の缶箱などを手掛ける大阪製罐の本社工場では、プレス機への部材供給で10台の多関節ロボットが活躍している。

 初めに導入したのは約10年前。作業者の事故を無くすのが目的だ。それまでは部材をセットするのは全て手作業。ズレた部材をセットし直したり取り出したりするとき誤操作で金型に手を挟む事故が時おり起こった。

 1台、さらに1台と導入し、今ではほとんどのプレス機にロボットが部材を供給する。製缶部統括部長の石橋寿惠夫常務は「ひと昔前とは違って事故は起こっていない。作業者が安心して働ける現場になった」。

 当初は事故削減のためだったが、生産性の向上にもつながった。月の生産は約100万個。人が作業に関わると習熟度の差によるミスで生産性や品質にばらつきが出る。

 しかしロボットが作業することで生産性が安定した。「プレス工程の人を減らして品質検査を増やせるようにもなった。少ない人数で品質の高い製品をつくれるようになった」と石橋常務。

 大阪製罐が手掛けるのは洋菓子やアミューズメント施設向けの缶箱。高級菓子などに使われるが、安価な紙の容器に代替えされることが増えている。そこで取り組むのが小ロットのオーダーメイドだ。

 3年前に始めたお菓子用の「お菓子のミカタ」などで、全国の菓子店から製作依頼を受けている。石橋常務は、「来年もロボットを追加する。生産性を高め、オーダーメイド品にもしっかり対応できるようにしていく」。

大阪製罐
住所:大阪府東大阪市岩田町2-3-28
電話:製缶部 06・6723・5545
社員数:83人
事業内容:ブリキ製缶、スチールキャビネットの製造販売。
主な設備:搬送ロボット10台(三菱電機)、プレス機43台(コマツ産機)、スリッター4台、ボディーメーカー6台、オートビード5台、シーマー9台など。

人ができない仕事を可能に
KPファクトリー 新人でも熟練の技

KPファクトリー1 「今年初めに溶接ロボットを1台導入したが、予想以上の成果。来年初めには2台目を稼働させる」と言うのは鉄道車輌部品を手掛けるKPファクトリー・吉崎真一社長。

 ロボット導入のきっかけは「ロボットを使えば、溶接の技量が無い新入社員でも、質の高い溶接ができるかも」と思ったことから。安全性が最優先の鉄道車両の部品を製作するには、最低10年程度の溶接技術の熟練が必要だが、人手不足と新規採用の難しさに悩まされていた。そこで、ロボットを導入すれば、初歩的な溶接技術とプログラミングを覚えれば、即一人前の仕事ができる…と導入に踏み切った。ロボット工業会の補助金も後押しした。

KPファクトリー2 新人2人がロボットの安全講習を受講し、プログラミングも習得。入社3ヵ月程度の社員が熟練者と同等の作業を短時間でこなせるようになった。プログラムさえすれば、休日もロボットは仕事をしてくれる。さらに注目は、熱すぎて人間ではできない厚物の溶接を、ロボットなら1/3以下の短時間で人よりもはるかにきれいに仕上がること。これにより新しい仕事にも進出できた。今ではロボット1台で4人分以上を稼いでいる。

 プログラムデータは保存し、よく似た溶接の場合は、過去のデータを呼び出して補正するだけ。データがたまればたまるほど合理化が進む。

 既に2台目ロボットを手配しており「ロボットで何ができるかではなく、何をさせるかを考えるべき。今後は仕上げや画像検査、ワーク交換にもロボットを活用し、ロボット事業部を立ち上げていきたい」と積極的。

KPファクトリー
住所:兵庫県三木市別所町花尻668―1
電話:0794・86・6333
社員数:56人
事業内容:N700系など新幹線他鉄道の側カウルや屋根・床下・室内外の部品、先頭構体、台車部品などを生産。
主な設備:ロボット溶接システム(ダイヘン)、溶接機(50台)、クラフトフォーマー、ファイバーレーザー加工機、プレスブレーキ、マシニングセンタなど。

システムインテグレータのご紹介

マクシスエンジニアリング

マクシスエンジニアリング

ロボット導入支援を後押し、画像処理システムに強み

 マクシスエンジニアリングはメカトロ技術、ロボティクス技術、画像処理・知能化技術を用いて、ロボットによるパレタイジング、ピッキング、検査、溶接、アライメント、シーリングなど、様々なFA装置を構築するシステムインテグレータ。特に画像処理システムに強みがあり、2010年に3Dロボットアイ(3次元画像センサ)を発売。ロボットに目を持たせることでバラ積みワークのピッキングをはじめ、ワークの外観検査などの自動化に寄与している。

 ロボット推進室の髙須浩章室長は「人手不足で中小企業からも協働ロボット導入の問い合わせが増えている」というが、「ユーザーがロボットで何をしたいのか明確になっておらず、また、ロボットで何でもできると思い込んでいる人が多い」と、ロボットに対する知識不足を指摘する。そこで北名古屋工場にロボットショールームをつくったほか、名古屋工業大学内にマクシスロボットアカデミーを設置し、ロボット導入支援セミナーを始めた。そこではロボット体験や教育講座を開くほか、ロボット導入の相談窓口として活用方法や導入費用の試算なども行う。「特に協働ロボットの導入にはISOの安全規格をクリアする必要がある」など、ユーザーの様々な課題や要望に応えている。

 また、研究開発も積極的で、愛知県が主導する「次世代ロボット社会形成技術開発プロジェクト」にも参画。航空機の生産性向上のためにエンジン部品の画像検査や仕上げ加工の自動化など開発を担うほか、NHKの「超絶 凄ワザ」で取り上げられた多関節ロボットによる「けん玉ロボット」のシステムを開発した。

 これからのロボットのテーマについて髙須室長は「1社に数人しかできない熟練者の技能をどのようにロボットへ置き換えるかが課題。技能者しかできない感覚をティーチングに取り込むのはこれから」と、さらなるロボットの可能性を示した。

マクシスエンジニアリング
名古屋工場:名古屋市西区木前町11
電話:052・503・2886
従業員数:430人
主な事業:産業用メカトロ機械の設計製作、設計及びエンジニアの派遣、金型設計及び製作、画像処理システムの開発など。

日本産機新聞 平成29年(2017年)11月20日号

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