2024年4月20日(土)

【特集】ー働き方改革ーについて販売店へアンケート
機械工具業界ではどこまで浸透?

回答72社

9割以上が「推進する」

 「働き方改革」はどこまで機械工具業界でも浸透しているのか。本紙では、実態を調査するため、販売店にアンケート調査を実施した。190社にメールを送付し、72社からの回答を得た。9割以上が「長時間労働の是正」、「賃上げ」、「女性や高齢者の就業促進」などを進めようとしていることが分かった。ただ、「労働時間短縮」では、IT活用などで進めているものの、自社単独では難しいとする声もあり、ユーザー業界を巻き込んだ活動を訴える声も多く、改善の余地は大きい。

 
 今回実施したアンケートの調査企業の本社所在地は、関西が最も多く46%、次いで関東・甲信越が37%と続く。中部地域からの回答が少なく8%で、中国・四国・九州からは13%になった。北海道からの回答は得られなかったが、国内の西部と東部を中心に全国から回答が得られた。  アンケート調査した企業を従業員数別にみてみると、1人~10人までの会社が35%、11人~20人が24%、21人~50人が17%、51人~100人までが14%、101人以上が10%という分布となった。事業規模別では、中小から大規模事業者まで、全体的にバランスのよい調査結果が得られた。

Q1.取り組んでいるか?

6割超「既に」と回答

取り組みはじめていますか まず、「働き方改革」について、何らかの取り組みしているか否かを尋ねたところ、6割を超える企業が「すでに取り組んでいる」ことが分かった。また、「将来的に取り組む予定だが、まだできていない」と答えた企業も3割近くを占め、合わせると9割近くの企業が、働き方改革の必要性を認識している。

 一方で、「取り組むつもりはない」と回答した企業も1割近くある。ただ、こうした企業の一部では、「現行の勤務制度で十分社員の理解を得られている」や「小規模なので、かなり社員が望む形の体制にしている」など、すでに「実行済み」という企業も含まれている。

 ことさら「働き方改革」を強調しなくても、労働環境の改善に積極的に取り組もうとする企業が多いことが分かる。

Q2.取り組む理由は?

労働環境改善が多数

取り組む目的について

 働き方改革に、既に取り組んでいる企業にその理由を聞いたところ(複数回答可)、「労働環境の改善」を挙げる企業が圧倒的に多かった。「将来的に人手不足が懸念される中で、労働環境を良くしなければ人が採用できない」(ある商社幹部)という懸念も背景にはあるようだ。同意の回答だが、やはり「人不足のための労働力確保」とする意見も少なくない。

 続いて「若手社員の定着のため」とする企業が多く、人材確保や育成を目的とする意見も多い。もちろん、「売上アップのため」や「残業代の削減」など、経営指標の改善を目的する声も。「自分自身を見直すきっかけにして欲しいため」と考えている意見も。

Q3.何に取り組んでいるか?

「長時間労働の是正」最多

取り組んでいる内容について

 取り組みが最も多かったのは「長時間労働の是正」で、続いて「賃金引き上げ」がとなった。

 「女性・若者の活躍」、「高齢者の就業促進」も戦力確保に向けた取り組みとして多くが取り組んでいる。一方で、「外国人の受け入れ」や「テレワークなど柔軟な働き方」においては、まだまだ取り組みが少ないようだ。

 「長時間労働の是正」については、ノー残業デーを設けたり、退社時間や月間の残業時間目標を設定するなどシステムを導入すると同時に、業務の効率化やワークシェアによる仕事量の平準化にも取り組んでいる。

 「賃金引き上げ」においては、定期昇給の他に、能力給や昇給額の引き上げをした企業も。この機に新人事制度を構築した企業もある。

 また、子育て支援などにより営業的な職種へも女性の活躍の場を拡大するとともに、女性の役職者も実現している。高齢者の就業促進についても定年後の継続雇用や他社定年退職者の雇用に積極的になっている。

主な回答
長時間労働の是正
 19時以降の社内への滞在を禁止/残業は上司の許可が必要/週一回、ノー残業デーを設定/月残業20時間以内実施/ワークシェアによる/業務の効率化

賃金引上げ
 基本給引き上げ/能力給の引き上げ/昇給額の引き上げ/新人事制度の構築

Q4.労働時間短縮の方法は?

IT・ノー残業日の導入

労働短縮の内容

 働き方改革で一番注目されているのが長時間労働。そのため、各企業がどのように労働時間の短縮を図っているかは注目されている。今回の機械工具販売店へのアンケート調査では、「ITツール活用による業務効率改善」の回答(34.6%)が1番多く、続いて「ノー残業デイの設定」(26.9%)が続いた。ITツールの活用は「モバイルの活用でどこでも業務ができる」という声など、スマートフォンやタブレット端末の活用で外回りの多い営業担当なども場所を選ばず営業業務や情報のやりとりができるようになり、業務効率を図る1番大きな要素となっている。また、業務などシステム投資を積極的に図る販売店も増えており、「インターネットを利用した見積もり注文システムを導入してコンピュータを利用した営業展開」という声もあり、ITツールや社内システムの刷新が労働時間短縮に大きく寄与している現状が浮き彫りになった。

 続いて「ノー残業デイの設定」とする回答が多く、その頻度は週1回が目立つ。また残業に関する項目で「残業時間の事前承認制度」導入を図る企業や「月20時間以内」、「会議を定時内で終わらせる」など、残業に一定の規制を設けることで効率良く仕事をこなせる仕組みを作っている。

 機械工具販売店の主な業務は営業活動なため、労働時間の把握が難しく、「みなし労働時間制の導入」(15.4%)とする回答が3番目となった。そのほか「フレックス等変形労働時間の導入」など幅広い取り組みが見られる。

Q5.成果は出ている?

40%が労働時間短縮

働き方改革の成果について

 成果は出ていますか?という質問に対し、最も多かったのは「労働時間が短くなった」。全体の40%が回答した。

 労働時間を短縮する方法として「定時退社を徹底する」とする会社が多く、「毎日は無理でも、せめて1週間に1日は定時で変える日をつくる」とする会社もあった。なかには平日の定時退社は難しくても「土曜日出社は減らしていきたい」という会社も。

 ただ、その一方で、「定時ぴったりで仕事を終わらせることが、見積もりや顧客へのサービス低下につながらないか心配」「能力が劣る社員にとっては仕事量が減るだけ」と懸念する声も。

 「労働時間短縮」の次に多かった回答は、「社員の勤務態度が変化した」(20%)。これは労働時間短縮による成果とする会社が多く、「ダラダラと仕事をすることが減った」「目的達成への手段とその効率を考える社員が増えたように感じる」などと答えた。

 3番目に多かったのが、労働時間短縮の成果のひとつである「残業代が減った」(15%)だった。

 そのほかには「採用率が上がった」が10%、「社員の定着率が上がった」が5%。ある会社は「定時を過ぎた後に、顧客への見積もりや卸商社への納期を問い合わせする時間が殆どなくなり、新人を採用し訳なったし、辞めることも大幅に少なくなった」と答えた。

取り組みまだのところは?

手段・方法に悩み

 働き方改革に「取り組まない理由」や「まだ取り組めていない理由」について質問したところ、様々な意見が得られた。

 「取り組まない」と回答した企業では、比較的小規模の会社が多かった。理由については「(今の状態のほうが)時間調整ができるから」と回答した企業もあり、柔軟な勤務体制が強みのようで、それが損なわれるとみているようだ。働き方改革を推進するうえで、自らの強みを損ねてしまう体制の変更であれば、本末転倒ともいえる。規模や業態に応じた工夫が必要だろう。

 また「取り組む予定だが、まだできていない」とする企業の回答ではいろんな意見が出た。「内容と実態を調査中」や「政府が強調するものではなく、必要に応じて取り組みたい」など、世の流れだからというだけで拙速に飛びつかない慎重型の企業も。

 「改革のポイントがわからない」という声も。

働き方改革の課題・工夫

●どうしても仕事の負担が個人によって差が出てしまう。改善できる方法がみつからない。

●営業の生産性向上が一番の課題。できない人ほど仕事も遅く残業したがる。能力のない人の方が給与が増えるのはどうだろうか。

●土曜出社日が月1日あり、今後、土曜出社を減らしていく方向で考えている。ただ、棚卸作業や決算後の全社会議など、平日ではやりにくいものもあり苦慮している。ほかの会社の様子も参考にしながら、進めていきたい。

●女性登用(活躍社会)など、女性社員の自主性(自らそうしたいと思う気持ちと決意)を、いつでも門戸を開きチャンスを与えている。

●少数精鋭で経営している。働き方改革を進めるためには人手が足りていない。

●小規模な企業にとって1人あたりの生産性向上を図ることは非常に大切。人的要因を含め労働時間短縮に向け、各自の役割分担をもう一度見直す。

●従業員の健康管理面では効果があると思うが、定時外のお客様とのやりとり(営業の場合)を無視、放置して良いのかどうか意見がわかれる。

●中小企業において取引先と卸に交渉するタイムラグを消化できない。検討・提案の時間はどうしても『時間外』となりえる。悩みである。

●生産性の向上が絶対条件であると意識づけること。従来通りの仕事のやり方を変えようとしない社員がいる。

●昨今、大手メーカー、問屋で夕方の取次ぎ時間が短縮される傾向にある。このことはまさに『働き方改革』からくる施策である。一方、直需店はそれに追随し『働き方改革』を推し進める際、取引先からの問い合わせや注文についてレスポンスやデリバリーに影響を与えかねない。今後どう対処していくかが課題である。

●経営トップの考え方を変える必要が大きい。昔と変わった。ダラダラと仕事をするのではなく、目的と達成感のある仕事のあり方を考えることが大切。仕事が好きでないと、会社にとっても個人にとっても不幸な結果となる。

●限られた時間の中で業務を行うことに従業員の意識・認識が定着しておらず、許可なし残業などが時々ある。上から下まで意識改革が必要。

●弊社はすでに10年ほど前から徐々に取り組んできた。それが今につながり、たまたまこのタイミングで政府の「働き方改革」が出てきただけだと感じる。「働き方改革」の中で語られる各々のこと自体がチグハグな内容も含むと感じる。

働き方改革に思うこと

 ●人よりも多く働け。早起きは人と同じでは…などなど。本当に才があれば、8時間内で人と同じかそれ以上の収入、人生でしょうが。別姓・別産・子の手当とか働く人の「個」を社会制度として再定義すべきだ。

 ●政府の「働き方改革」の名のもとにアルバイトも含め他の職に従事することを認め、勧めている。これは所得税の徴収を増やし、財源確保を行う構図である。余暇を楽しみ健全なワークバランスの実現から真っ向から矛盾する政策である。

 ●大企業と小企業を同じ目線で見ることは無理がある。昔と比べ、土日祝が休みになり1年の1/3が休日になっている。これ以上減らすと海外との競争に負ける!豊かな暮らしはどうしたら手に入るのか。もっと「働く」ことを「善」とする日本の良き考え方を大切にした対策を考えてほしい。

 ●長時間労働の是正は、社内取り組みだけでは限界がある。顧客の見積り簡素化など日本の産業界全体での効率化取り組みが必須と思う。

 ●サラリーマンは残業を希望し、経済的安定を望んでいる(人もいるので)、あまり『残業廃止』など騒ぎ立てる必要なし。効率的な業務ができているかどうかは、会社、管理者が評価することであり、やる・やらないは本人の判断次第。毎日、明るいうちに帰宅し収入が少ない亭主を家族は喜んでくれるのだろうか?

 ●女性の中でも別に登用されなくても現状環境の継続を望む人もいる。登用されたいのは会社の都合ではないのか?

●政府の進めるような「働き方改革」としての明文化しての取組みは行っていない。幸い10数名の小さな会社。労働環境などの問題があれば、「規約に触れる」とか「所定の手続きが必要」など手間のかかる障害はありません。すぐに問題解決に取り掛かることができます。特に何をしているわけではありませんが、社員の方が毎日意欲的にのびのびと仕事に従事できる、この会社で働いていてよかったと思ってもらえるような労働環境作りを目指している。

日本産機新聞 平成29年(2017年)8月5日号

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