2024年3月29日(金)

治具の生産現場を訪ねて
チタ製作所

絶対精度の高精度治具

高品質・低価格・短納期を実現

コスト競争力4倍

「治具を制するものは部品を制する」と、もう数十年前、トヨタ自動車第1生技の人に聞いたことがある。自動車のエンジンやミッション加工をトランスファー・ライン(TL)から汎用マシニングセンタ(MC)をメインにするフレキシブル・トランスファー・ライン(FTL)に変わる頃と記憶する。それまでは多軸で加工する専用機やボーリング、ミーリング、タッピングセンタなど複数の工程を工作機械と搬送装置でつなぎ少品種大量生産をするTLが主流を占めていたが、早く削ることに長けたラインは、機種変更があるたびにムダを発生させ、FTLに変わった。「治具」が機械加工の“生命線”となった。治具と汎用MCラインを作るチタ製作所(愛知県大府市)を取材した。

この話をしてくれた人がチタ製作所を紹介してくれた。

従業員80人余、売上高27億円(2016年3月)の小規模な企業だが、トヨタ自動車及びトヨタ自動車グループのエンジンやミッション、各種ユニット部品の専用機ラインを年間600セット前後製作し、日本国内はじめ米国、欧州、中国、インド、タイ、オーストラリア、メキシコなどに輸出する。

国内には2工場を持ち、本社工場で部品加工と治具製作を、本社工場から約1キロ離れた北崎工場(2008年建設)でFTLにする。

同社の治具、汎用MCライン製造は、いくつかの特長がある。

一つは、設備機械。多面パレット(最大36パレット)、多本数のATC(最大270本)付きMCや五面加工機、複合加工機などを設備する。生産現場の責任者で副社長の夏目健二氏は「24時間365日稼動を最終目標」にしているという。

現在のMCの月間稼動は530時間。月30日稼動として1日17・8時間稼動する。これまでの最長運転時間は、「600時間。チャンピオンデータでは720時間」を記録する。「単純計算で、1年間昼間だけ動かすと平均約2000時間。1年は8760時間ですから休日や夜間稼動で効率をあげる」。

二つは、恒温室。設備機械をフル稼働させるために工場を準恒温室にし、精密治具部品加工は二重恒温室にしている。室温は、20度±1度はかなり厳しく工場を管理する。夏目副社長は、「金曜日の帰りに土曜日と日曜日2日分のワークを載せて置くと、月曜の朝には目標の生産量ができ上がっている」。

三つは、治具製作。同社は、図面通りの治具を製作し、一定トルクで組み付ければ、そのまま高精度治具として使えるのが特徴。「出荷前に500サイクルの耐久試験を行い、加工部品の精度出しは機械上で治具を調整することもなく、治具の位置あわせだけで簡単に精度出しができる」。

工場にもいくつかの特長がある。「目で見る管理」というホワイトボードの生産スケジュール表もその一つ。「1人ひとりが鉄工場の親父さんという意識で機械に向き合う」ところがミソ。

搬送セットアップにも力を入れている。搬送装置を現地据付すると、工数が膨らむ。そこで、同社は素早く立ち上げることを目的に社内で搬送装置を作成し、客先に持ち込むことで工数削減を可能にしている。現状は、オフラインティーチと社内作りこみは88日かかっているが、これを60日で現地据付、調整することを目標にしている。内訳は、シミュレーションでの作り込み22日、社内での作り込み34日、現地据付・調整4日。標準機の作り込み、天吊りロボット、治具設計・製作、デバッグ(MCに治具を載せ大手がやらないところまで仔細に対応するというプログラム)を連携させて現状の3割カットを目指す。

この社内作り込みは、据付図面、現地スケッチデータを基に簡易治具を製作し、三角測量で計測し据付誤差を±0・5㎜以内に設置し、オフラインティーチデータで確認することができる。また、品質チェック、工具交換サイクルをインターロックで完全な動作チェックを実施している。

夏目副社長は「とにかく1人ひとりが生産性を上げるところに直結している。全員が経営者。強みは、素材工程から完成までができること。また、加工ラインも作れる。その上に載せる治具も受ける。搬送だけでも売る。それから加工するためのNCプログラムも作る。ロボットのティーチングも、システムも行う」と、今後も自動車部品加工の縁の下役を買って出る。


会社メモ

社  名:株式会社チタ製作所
本  社:愛知県大府市梶田町3-14
設  立:1946年
資本金:2300万円
代表者:間瀬康友氏
売上高:27億円(2016年3月)
従業員数:83人(顧問、パート含む)
工  場:本社
北崎(愛知県大府市北崎町井田80-1)
事業内容:治具設計・製作、治具載せセットアップ、工程間ロボット搬送、自動車部品加工専用機の設計製作、自動車部品・タイヤ自動組付専用機の設計製作、生産設備の改善・メンテナンス、機械部品加工など
主な取引先:トヨタ自動車、豊田自動織機、中央精機、アイシンAW、内田硝子、愛三工業、曙ブレーキ工業、オディックス、ヤマハ発動機など


日本産機新聞 平成28年(2016年)5月25日号

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