2024年3月28日(木)

販売店5社が語る 未来を拓く戦略
第2部ー勝ち抜くための取り組みー

販売店5社が語る 未来を拓く戦略 第1部ー直面する課題ー

専門の競争力に磨き

異分野に挑み差別化

座談会出席者(50音順)

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岡本機工
岡本 幸久社長

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サカイ工機
小林 洋介社長

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三和精密
鹿村 佳孝常務

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大徳機工
横山 欽一社長

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横山機工
横山 利治社長

 専用機の共同開発、部品の受託加工、機械の据え付け、有機的に活動する組織づくり―。機械工具販売店座談会・第2部では、未来を切り拓くための取り組みについて語ってもらった。事業理念や業容の異なる5社それぞれの戦略に、個性が光る。

横山氏 加工会社をグループ化 工具販売に相乗効果

司会 製造業の海外移転やネット販売の参入などで機械工具を取り巻く環境は変化しています。未来を切り拓くためにどんな取り組みをしていますか。

横山(横山機工) 機械工具の販売だけでなく新事業に挑戦しようと、2年前から部品加工を始めました。当社のユーザーでもあった近くの鉄工所が会社をたたむと聞きグループ化しました。

司会 機械工具販売と畑違いですが難しくはないですか。

横山(横山機工) まあまあ大変ですよ(笑)。考え方が違いますから。ものづくりは簡単にできないということがやってみて初めてわかりました。

司会 部品加工事業の進捗はいかがですか。

横山(横山機工) 一進一退です。ただ、5年前からやっていたウォータージェット加工に加え、切削、旋削加工が自前でできるようになったことで、ユーザーの幅がグッと広がりました。新規のユーザーだけでなく、古くからお付き合いいただいているユーザーからも「こんな加工、やってみる?」と普段の販売の仕事以外の依頼が増えました。今期末までには円筒研削盤も稼働するので楽しみです。

司会 相談の多い内容は。

横山(横山機工) 昨年展示会に出展したところ、加工で困っているという多くのものづくりの技術者の方々に出会いました。みなさんのニーズは「もっと安く造りたい」か「この加工がどうしてもできない」のどちらか。「もっと安く」のケースは収益性が低いのが難点ですけれど(笑)。「どうしてもできない」ケースがうまくいくとグッとその会社との距離感が縮まります。

司会 始めた目的は何でしょうか。

横山(横山機工) 部品加工をすることで、より特色を出そうと考えました。部品加工の知識とノウハウを持つことで、一般的な工具商には無い魅力を生み出せるのではないかと。

司会 それは部品加工の経験を機械工具販売に生かす、といったことでしょうか。

横山(横山機工) 例えば、そうですね。ただ部品加工に対する馴染みはまだまだ浅い。相乗効果が現れてくるのはこれからでしょう。

司会 ユーザーの立場にもなり、新たに感じたことはありますか。

横山(横山機工) ユーザーが工具商に求めていることが判るようになりました。今までどれだけユーザーの気持ちを知らずに機械工具商をやってきたか。ずっと以前「お宅の会社は工具や加工について知識が薄い。提案力もない。ただ、近いだけや」と言われたことがあります。それが今の工場長ですけど(笑)。ユーザーの立場からすると、新商品やキャンペーン商品の「買って頂けないですか」的な押し込み販売は不用です。

司会 工具商に求めることは何でしょう。

横山(横山機工) 何より、豊かな知識やノウハウに基づく提案が欲しい。特に暗黙知的なもの。ものづくり企業の最大の関心は生産性の向上。生産性を高め受注を増やしコストダウンも図りたい。現場の課題解決につながる方法を提案して欲しい。

司会 より専門的な知識が必要ですね。

横山(横山機工) そうです。専門的な知識を持つ商社の提案は有り難い。当社が手掛ける部品や保有する設備、抱える課題を理解してくれていて、生産性が上がる方法を提案してくれる。部品の図面を見て加工条件や工具を選定してくれる商社もあります。提案の説得力が違います。無くてはならないパートナーです。

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小林氏 専用機や独自商品開発 特色出し独自の魅力

司会 サカイ工機さんは特殊な機械の販売や独自製品の開発に力を入れています。

小林 ネジを生産する特殊な機械を自社工場、または他メーカーと連携し新たな機械の開発に取り組んでいます。営業がお客様にヒアリングして新しいニーズをメーカーにフィードバックし、従来機種を改良し時代にマッチするカタチにする。生産性を改善することでお客様に喜ばれ、商品開発につながるのでメーカーにも喜ばれています。

司会 その最大のメリットは何でしょうか。

小林 開発から携わっているので競争が殆どないということです。専用機なので開発ノウハウは当社とメーカーにしかありません。お客様の機械設備の正規補修・点検をできるのは当社だけです。また補修や点検を定期的にすることで機械更新時期を的確につかむことができます。

司会 ユーザーが別のメーカーに望む場合はないですか。

小林 もちろんありますが、機械工具商ですから様々なメーカーを取り扱っています。提携しているメーカーの機械か、別のメーカーの機械か、ニーズに最も合うものを提案します。そして、その検証結果はメーカーにフィードバックし、次の開発にも生かす。メーカーと提携することで、商社とメーカーの機能が複合するようなビジネスができるのではないかと思っています。

司会 ケミカル製品やセンサーなどの開発にも携わっているとお聞きします。

小林 そうです。お客様のニーズに応える商品をつくりたいと常々、思っていました。センサーは機械の歪みや変則的な動きに反応するもので、異常があると機械の動きを止め不良品を減らせる。ケミカル製品もメーカーに協力してもらい超極圧潤滑剤などを手掛けておりその潤滑剤をベースに新商品開発へ繋げています。ケミカル製品は、切削やプレス加工の品質やスピードに大きく影響するので、関心の高いお客様は多いです。

司会 独自商品の販売は伸びていますか。

小林 専任に1~2人置けるくらいの売上になってきました。ただし当社の事業全体からするとまだまだです。

司会 これからもっと伸ばしていきたいというお考えですか。

小林 特色を出せる商品を探し、もっと開発していきたい。独自開発の商品なので、お客様への今までにない提案材料になります。商品開発のもう一つの目的は、当社の特色を出して差別化することにあります。メーカーとタイアップして積極的に取り組んでいきたいです。

岡本氏 機械据付や建屋施工も 要望に応え新事業に

司会 岡本機工さんはいかがでしょうか。

岡本 機械工具の販売に加え、機械の基礎及び据え付けや工場の建設なども請け負っています。通常お客様は、土木はゼネコン、建物は建設会社、電気は専門業者、そして機械は機械工具商というように別々に発注します。それを当社が全ての窓口になれば、お客様はその工程管理の手間を省けるのではないかと思ったのです。

司会 それには専門的な資格が必要ですか。

岡本 電気工事はまだですが、建設、とび土木 機械器具の設置工事業の資格を取得しました。とび土木の資格は特定の認可を取り、大規模な工事にも取り組んでいます。機械の基礎工事やとび土木なども特定業者の認可を受ける予定です。

司会 始めた理由は何でしょうか。

岡本 インターネットであらゆる情報を知り、物を買える今の時代、指示された型番の商品を手配し届けるビジネスモデルでは機械工具商社は今後長続きしないと常々感じてきました。ネットで買えない商品を提案し販売できる知識と経験値を高めていかなければいけない。そう思い続けているなかで、お客様に「施工などもして欲しい」と求められ始めました。

司会 具体的に機械据え付けや建物の工事はどうやって進めていくのでしょう。

岡本 工事をして頂くのはそれぞれの専門技術を持つ業者の方々で、当社は工事施工・品質・工程・安全を管理する立場です。今後も得意先のより大きな規模の仕事にも応えたいと思っています。特定業者の認可を受けるのは、そのためです。

司会 工具販売と違ってお金の回し方は変わりませんか。

岡本 工事などにかかる費用は専門の業者さんに全て先払いです。何億円という仕事を受注したらお金が続くかどうかと正直心配になります。1億5千万円の仕事を請け負ったことがあり少々心配になりました。結局、経理からお金のことで相談されたことはありませんでしたけど(笑)。

司会 そうしたシステム受注を手掛けるうえで最も大切なことは何ですか。

岡本 覚悟です。お客様の生産性が向上するように責任を持って、刃物やツーリングを提案し、施工もするだけの覚悟があるかどうか。工具や機械を使うプロフェッショナルに満足して頂かないといけない。その覚悟とプロ以上の知識を持っている自信が必要です。

司会 とはいえ巨額の仕事はハラハラしませんか。

岡本 営業が大きな仕事を受注してきたらトップとしては心配です。「しっかりと打ち合わせをしているのか」「漏れ落ちはないか」とつい思ってしまう。けれどトップは、それを乗り切るという気構えが大切です。

司会 機械の据え付けや建屋の建設。機械工具業界では今まで例の少ない試みですね。

岡本 経営環境が大きく変わる中で勝ち残るためには新しい道を探すしかない。建屋や基礎の施工もそうですが、新たな道を探すのに大切なのは、お客様の要望に応えようと取り組むことです。例えば最近は、ある配管メーカーの要望で専用工具を新開発しました。新規格の管の加工が上手くいってなくて「どの会社に頼んでもできない」と相談されたのです。試行錯誤する中、開発に成功、量産することになった。お客様に喜んで貰うために挑んだことが新しい事業につながった。

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横山氏(大徳機工) 部品加工を請け負う 社内に図面書ける人材

司会 それでは大徳機工さんはいかがでしょうか。

横山(大徳機工) 機械工具の販売において、専用機や冷却装置、加工工具などのお客様の要望に応えるよう日々取り組んでいますが、その一方で手掛けているのが機械加工部品です。

司会 それはお客様から仕事を頂くのですか。

横山(大徳機工) そうです。お客様が機械加工で困っている時にご相談を頂きます。金属の部品や、金属と樹脂を組み合わせたような部品など様々です。

司会 加工図面などはどうしているのでしょうか。

横山(大徳機工) 社内に図面を描ける技能を持つ人材がいます。経験の長い熟練者です。

司会 社内に図面を描ける人がいるというのは強みですね。

横山(大徳機工)
 ただ、後継者を育てることができていません。現状は問題がありませんが、将来的にはその役割を担う人材を育てていくことも考えないといけません。

鹿村氏 新たな組織、評価制度 夢を持てる会社に

司会 三和精密さんはいかがですか。

鹿村 当社で働いてくれている方々に夢を持って頂けるような会社にするための組織づくりに取り組んでいます。

司会 具体的にはどういったことでしょう。

鹿村 ここ数年、明石(兵庫県)や栗東(滋賀県)、枚方(大阪府)に相次いで営業所を開設しました。よりお客様に近い場所からサポートするのが目的ですが、新たにポジションをつくるためでもありました。30~40代の若手が成長していくためには、今よりさらに責任のある立場に就くことが大切だと感じていました。以前の組織だとポストは限られています。営業所をつくれば新たな役職が生まれる。そうすることで役職を目指そうと意欲が生まれるでしょうし、役職に就けばより大きな責任感を持ち、またマネジメント能力も伸びると思ったのです。

司会 ただ責任者とは別に専門的な技能で能力を発揮する人もいます。

鹿村 全ての人が責任者や営業として優れているわけではありません。長所や短所は人それぞれです。例えば、営業としては他の人よりも劣るけれど、極めて専門性が高く、特定の商材については誰にも負けない知識を持つ人がいる。そういう人は評価基準を変えると、能力をより発揮することがあります。ある商材についてはその人が全ての拠点をバックアップするようにしたら、全拠点の営業の知識力の底上げにつながり、販売も伸びました。

司会 評価制度が必要ということですね。

鹿村 だから新しい評価の仕組みをつくろうと考えました。これまでは顧客ごとの売上や利益で評価していましたが、ある商材の売上の推移や、他の商材との売上の伸び率の違いを比較するなどして評価するものです。

司会 新たな組織や評価制度をつくり、次のステップへと進む準備ということでしょうか。

鹿村 まさに夢を持てる会社にし、社業を発展させるための基盤づくりです。社員は皆、日々の仕事に忙しく、従来の体制では知識を増やしたり能力開発したりすることは、なかなか難しい。それが自然とでき、前へ前へと進んでいける会社にしていきたいですね。

※次号に続く

日本産機新聞 平成28年(2016年)1月15日号

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